京都駅からほど近く、街の中心に凛とそびえる東寺。
世界遺産としてあまりに有名ですが、実際に足を運んでみると、写真や映像では伝わりきらない“空気そのもの”がここには流れていました。今回は、五重塔・講堂・金堂の拝観券を購入し、ゆっくりと境内を巡ってきました。その時の印象を、感想を交えつつご紹介します。
今回の旅は、この東寺の拝観と、周辺の和菓子屋さんをめぐる“ゆる旅”。ちょっと早起きして出かけたおかげで、まだ混雑していない朝の境内をゆっくり味わうことができました。
東寺の朝散歩へ|静寂の境内を歩く楽しみ
境内は池を中心に広がり、紅葉にはまだ早い時期でしたが、夏の名残と秋の気配が混じる柔らかな景色が広がっていました。砂利道はきれいに整えられ、どこを歩いても気持ちよく散策できます。
観光地として人気が高く、外国人旅行者も多く見かけましたが、朝の早めの時間帯は比較的ゆったり巡れる印象です。静かに仏像を眺めたい方や、境内をゆっくりと散策したいという方は、できるだけ早めの訪問が良さそうです。
この日は「五重塔・講堂・金堂 拝観券」(1,200円)を購入。東寺の主要スポットをまとめて巡れるので、初めて訪れる方でも満足度が高いセットです。
五重塔の内部はこうなっていた|大日如来の思想と装飾の美
東寺といえば、まず思い浮かぶのが五重塔。全国の木造塔の中でも指折りの高さで、遠目からでも存在感が抜群。しかし、塔の魅力は外観だけでなく内部の構造にも注目すべきポイントがあります。中に入ると、柱が大日如来を象徴しているという思想が取り入れられており、壁や柱を彩る細かな装飾、そして天蓋(てんがい)部分の細やかな意匠などは息をのむほど精密。鮮やかに残る彩色、木材の温かみ――そのすべてが歴史の積み重ねを語りかけてくるようでした。
金堂の薬師三尊に圧倒される|東寺のご本尊を拝観
次に向かったのは、東寺のご本尊が祀られる金堂。
堂内に入ると、こちらを包み込むような空間と静けさが支配していました。
その中心に鎮座するのは、堂々たる薬師如来。その両脇には日光菩薩と月光菩薩が静かに立ち、まるで時間がゆっくり流れているような感覚になります。広々とした空間の真ん中に、たった3体だけが“ドンッ”と存在している構図は、とにかく圧倒的。余白の多さがかえって緊張感を生み、三尊の姿を際立たせています。
朝の柔らかい光に包まれた薬師如来はどこか温かく、でもどっしりと構える威厳があって、その“間”の持つ力に心が吸い込まれていくよう。
ただその前に立つだけで「守られている」ような安心感と、言葉にできない重みがじんわり伝わってきました。
東寺の金堂は何度でも来たくなる場所だなと改めて実感しました。
立体曼荼羅が広がる講堂|時間を忘れる異空間
そして旅のハイライトともいえるのが、弘法大師によって造られた講堂の立体曼荼羅。
金堂の静寂とは対照的に、講堂は一歩入った瞬間、まさに“異世界”のような迫力。こちらで展示されているのは、密教の世界観をそのまま表現した「立体曼荼羅」。大日如来を中心に、多数の仏像が規則正しく並んでいます。五大明王を中心に、五智如来・五大菩薩・天部など21体の仏像がズラリと並んでいて、それが“曼荼羅”としてひとつの世界を形づくっています。
たくさんいるはずなのに、一体一体が驚くほど“生きている”。造形の迫力、細部の緻密さ、表情の深み……どれを取っても見応えがあり、それぞれが確かな役割と存在意義を持って立っているのが伝わります。視線を移すたびに新しい発見があり、気づけばその場にしばらく立ち尽くしてしまうほど。ここだけで「1日いてもいい」と言われる理由がよく分かります。
講堂は、静寂と熱量が同居する、不思議な空気に包まれる空間でした。
東寺観光の所要時間と混雑状況|朝がおすすめな理由
境内は池を中心にゆったりと広がり、訪れた時期は紅葉が色づく一歩手前。緑から黄へ移り変わる葉のグラデーションもまた美しく、砂利が丁寧に整えられている道を歩くだけで心が洗われるような気持ちになります。
紅葉越しに下から見上げる五重塔や、池の水面に浮かぶ色づいた落ち葉を眺めながらゆっくりと過ごす時間がまた贅沢です。
観光客は多いですが、朝の早い時間帯ならそれほど混雑のなく比較的ゆっくり見られる印象。のんびり写真を撮りたい方は、午前中の訪問がおすすめです。
境内には朝の5時から、金堂や講堂のあるエリアには8時から拝観することができます。
境内の拝観と御朱印、そしてゆっくり散策まで含めて、滞在は約3時間ほど。東寺の空気が好きな人なら、1日ずっといても飽きない場所だと思います。
御朱印の種類といただける場所|東寺の御朱印まとめ
東寺の御朱印は食堂(じきどう)で頂くことができます。
種類は定番10種類に、期間限定のものも加わりかなり充実。基本は1つ500円、限定品は1,000円のものもありました。
すべてその場で書いていただけるので、少し並ぶことになりますが、筆の運びを間近で感じられるのは、やっぱりうれしい体験です。
東寺周辺の和菓子屋さん2選|実際に食べて本音レビュー
東寺観光の楽しみは境内だけではありません。周辺には、昔ながらの素朴さと職人の心が詰まった和菓子屋さんが点在しています。今回は、特に印象的だった2店をご紹介します。
① 御菓子司 東寺餅|ふわふわ食感と優しい餡子が魅力
●東寺の北側・慶賀門から北に徒歩2分
まず立ち寄ったのが「御菓子司 東寺餅」さん。ほんのり甘い香りに誘われて暖簾をくぐると、昔ながらの気取らない和菓子屋さんが迎えてくれます。
看板商品の東寺餅は、餅の生地がやわらかくてふわふわ!
そっと手に持つだけで柔らかさが伝わってくるほど。中の餡子は控えめな甘さで、どこか懐かしい味。食べると口の中でスッと消えていくような優しい美味しさです。餅の柔らかさと餡の控えめな甘さが絶妙に調和していて、気づけばつい手が伸びてしまいます。
ただし要注意ポイントがひとつ。
東寺餅は「その日のうちに食べる」こと。
外側の餅生地は翌日になるとどうしても固くなるので、「買うのはその日に食べられる分だけ」が鉄則。たくさん買いたくなる魅力があるのですが、できれば買ったその日のうちに楽しむのが一番です。
旅の途中で食べ歩きするのにもちょうど良いサイズ感でした。
② おはぎ巴屋|目の前で包んでくれる“できたておはぎ”
●東寺の西側・西門から目の前、徒歩1分
次に向かったのが、東寺の西門を出てすぐの「おはぎ巴屋」さん。
ここは本当に、知らずに歩いていると通り過ぎてしまいそうな、まるで普通の民家のような外観。扉を開けるまで本当にお店なのか不安になるほどですが、それがまた“良い意味での隠れ家感”を醸し出しています。
扉を開けると香り高い餡子と炊きたてのもち米の香りがふわっと漂います。
店内は2人入ればいっぱいになるほどの小さなお店。
おはぎを注文すると、店主さんが 目の前で餅米と餡子を包んでくれるという贅沢なスタイル。見ているだけで幸せな気持ちになります。
おはぎは「こしあん・きな粉」の2種類で、どちらも絶品。特にあんこは、粒の残り具合が絶妙な食感のアクセントになっていて、甘すぎないのに深みのある味わい。もち米との相性が本当に最高で、「これぞ手作りのおいしさ」と言いたくなる味でした。
店主さんの柔らかな雰囲気も相まって、思わず「また来ます」と言いたくなる、そんな優しいお店でした。
■ おわりに ― 東寺の旅は心もお腹も満たされる時間
今回の旅は、東寺の壮大な仏像と静寂の時間、そして近くの和菓子屋さんの温かい味に触れる、とても満たされたひとときでした。
歴史ある寺院と、地元の人に愛され続ける素朴な和菓子。どちらも京都ならではの魅力で、東寺を訪れる際にはぜひセットで楽しんでほしいコースです。
朝の澄んだ空気の中で歩く東寺は格別。歴史を感じながら、甘い和菓子でひと息つく旅。京都観光を計画している方は、ぜひ「東寺+和菓子めぐり」を旅程に加えてみてください